Sunday, July 26, 2009

ゲイツ教授の件 

アメリカで警察官と言えば、正義の味方だというグループと搾取する者と見るグループに分かれる。私は自分の経験から、4割が善玉警官でその他はろくでなしだと思ってる。因に警官の大半は共和党支持である。

先週話題になったのが、アメリカで最もリベラルな町ケンブリッジで起ったゲイツ教授逮捕事件。ゲイツ教授は、ハーバードで教鞭をとり、アフリカ研究の権威。教育系チャンネルでも常連のスター教授。

教授は中国から帰った際、自宅のドアを開かずこじ開けようとしたが、それを見たお節介おばはんが警察に、”怪しげな黒人が...”と通報。警察が捜査に来た時には教授は既に家の中にいた。ここで口論が始まる。”人種差別だ、俺が誰だか知ってるのか”と罵る。警官は”秩序を乱した”と教授を逮捕。因みに教授は杖をついた小さい中年のおじさん。
Professor Henry Louis Gates Jr is arrested outside his home in Cambridge, Massachusetts, 16 July 2009 (Amateur photograph)

私は、警察が根本的に悪いと思う。自分の家で大声で怒鳴って手錠をかけられるのは異常。とはいえ...

教授に落ち度はあっただろうか? ゲイツ教授は比較的メインストリームで”寄らば大樹の陰派”、エスタブリッシュメントを揺さぶる発言を避けるタイプ。ハッキリいえば、一部の黒人は彼をアンクル・トム的だと見ている。事件後、著名な社会派黒人教授がテレビに出てコメントしていた。大半は、”警察の黒人やラテン系に対する恒常的な差別的行為は、この際建設的に見直されるべき”という内容だが、マイケル・ダイソン教授は、ゲイツ教授が”切れた”のは”上流階級黒人シンドローム”と皮肉のニュアンスを含む発言(笑)。

一般的に中流階級の黒人がこの様な状況に巻き込まれると、大人しく警察の支持に従う(皮肉の一つも言うだろうが)。

オバマは記者会見でこの一件に対する意見を求められた。彼は、教授とも知合いである事から、”警察の処置はアホだ”とうっかり言ってしまう。確かに彼は正しいが、政治的には失言。予想通り波紋を起こし、次の日に”警官と電話で話しをした、そのうちホワイトハウスでビールでも飲んで...”と表面上一件落着。勿論、共和党は”謝れ”と叫んでいる。

プリンストンのメリッサ・ハリス・レースウェル教授(政治学)は、これを受けて、”ゲイツ教授ならビールより、ピノ・ノワールの方がお好みじゃないかしら”と皮肉。ゲイツ教授はこの一件で爆発している様だが、警官による黒人/ラテン系虐めは。日常茶飯事、彼らにとっては”ぬらりひょん”の様に常に頭の片隅に住み着いている。

保守派はこれを切っ掛けに”逆差別”だと反撃している。搾取された経験のない者が、ダダを捏ねている奴らは実にコミカル。



Saturday, July 25, 2009

For profit or not for profit

今、オバマのヘルスケアー改革が話題の中心。アメリカでは、企業・雇い主が健康保険を提供する。保険会社は当然営利企業であり、単純にはこうやって儲ける。

保険料+保険料の運用利益-保険金=粗利益

たんまり保険料を受け取りそれを運用、保険金は払わない様に逃げる。アメリカでは病人に対する治療は医者判断より寧ろ保険会社のマニュアルによる。リスクの高い人や、既に病気にかかっている人は当然引き受けない。

保険料の高騰ぶり、医者にが払う賠償請求保険はうなぎ登り。アメリカ人の医療費は他国比2倍以上。 そんな訳で、個人営業や、小企業に勤める者で保険料が高過ぎて買えずにいる者が全人口の15%に達すると言われている。

そこでオバマは選挙当時の公約を通り、国が健康保険を一部スポンサーするという政策をプッシュしている。勿論、共和党は”金がかかり過ぎ、保険会社が潰れる”と大反対。しかし厄介なのは、Blue Dogと言われるコンサバ系民主党議員。彼らは共和党が強い地盤から選出されていることから、リベラルな政策にことさら反対する少数グループ。

私がここで考えたのは、健康保険会社や病院が営利企業である必要があるのだろうかという事。アメリカには、刑務所の運営を下請けする、Correction Corporation of America(上場会社)もある、彼らに収容者を更生する気はさらさらなく、寧ろ収容者を増やす事に興味がある。イラク戦争でもハリバートン等下請けが大儲けした(コカコーラを一本7ドルで売ったとか)。ここまで来るとオゾマしい。

何でも”儲”につなげようとするのは、フリーマーケットに於いてはいいステロイド効果はあるが、全てが"営利"である必要もないという素朴な疑問を持つ時代が来ているのかも知れない。

私のもう一つの素朴な質問は、何故雇い主が健康保険を供与するのだろう?健康保険料は、営業経費を食い散らし(GMが良い例)、米国企業の競争力を弱めている。



Sunday, July 19, 2009

Jamie Dimonは金融界のロックスター


JPモルガンCEOのジェイミー・ダイモンは格好良すぎる。彼に惚れてる女性は、どうも私だけじゃないらしい。彼が、CNBCなんかに出ると胸がキュンとなる。

金融危機以来、大手銀行唯一の勝利者(ゴールドマンやモルスタは投資銀行というか巨大ヘッジファンド)として浮上。彼が口を開くと、皆が注目。議会の公聴会でも、冴えない他の銀行のCEOの言い訳がましいおっさんに混じって、彼は唯一若々しく且つ強かだった。彼の痛快な率直さは、不思議にセクシーなのである。



彼のレジメは、映画になっていい位のストーリー性がある。ハーバードのMBAを取得後、当時アメリカン・エキスプレスのサンディ・ワイルに見込まれ直属の部下になる(GSとMSのオファーを蹴って)。二人はアメックスを去り、損保やソロモン、Citiの吸収統合を繰り返し、Citi Groupという帝国を築く。90年代後半、ワイルは自分の娘を昇格させ、ジェイミーとの確執が深まる。1998年、彼はCitiを去る(彼自身は首になったと言っている)。

2000年、ジェイミーは当時全米5位のバンクワンのCEOに就任、4年後JP モルガンがバンクワンを買収した際、彼はCEOの座を勝ち取る。

その後、ジェイミーは大胆なコスト削減に専念(これに関しては、JPモルガンの社員は”エリート銀行を地銀みたいに運営しようとしてる”と文句をたれていた)、アセットも他の銀行よりコンサバに運用。金融危機に際しても、ベア・スターンズやワシントン・ミューチュアルを買収する余力さえあった。彼は、欲の塊の様なワイルから、”Greed is not necessarily good ( 欲は必ずしもいい事ではない)“と言う事を学んだのかも知れない。

オバマはジェイミーをこう賞賛している。

"You know, keep in mind, though. There are a lot of banks that are actually pretty well managed; JP Morgan being a good example. Jamie Dimon, the CEO there; I don’t think he should be punished for doing a pretty good job managing an enormous portfolio."

3月のスピーチ(No silver bullet):Dimon: No Silver Bullet - CNBC.com


Saturday, July 11, 2009

Algorithmic Tradingの脅威

Algortithmic Tradingとは、日本で一般的にシストレと言われるものに近い。アメリカでは、Quants, Robo-Trade, High Frequency Trade, Black Box Tradeと呼ばれている。

ここで問題視したいのは、そのボリュームである。例えば、NYSEに於けるAlgorithmic Tradingは5割から6割に達している。その内の6割がゴールドマン・サックス。という事は、彼らのボリュームは全体の3割以上ともいえる。しかも、成功率の高いプログラムは皆が真似るのであり、大手のファンドは皆似通ったプログラムを使っている。大手ファンドのプログラムのパターンにおんぶする連中も実際多い。

この様な、大量且つ迅速なトレードは、勿論、市場に流動性をもたらすという点で必要である。それでも、この圧倒的なボリュームは、市場を自由自在に動かせるというのは、誰も語りたがらない事実。

株式市場は3月に底をつき、急上昇したものの、6月7月と不調である。投資家が戻らない。これは、景気の先行き不安以上に、市場に対する信用が欠如しているからでもある。市場の警察であるべきSECは後手後手、しかも自分たちの将来の雇用者である大手ブローカーの機嫌を損ねたくない。また、洗練されたシステムを理解する程有能でもない。

先週末、ゴールドマンの極秘プログラムを盗んだとされる元社員が捕り、少し話題にはなったが、こんな話をすると”あんたは陰謀論者だ”で片付けられるのがオチ。

しかし乍ら、最近”Zero Hedge"というブロガーが精力的に、ゴールドマンや政府にチャレンジしている。彼らはかなり高度な知識があり,内部事情も理解している様である。最近、彼らはゴールドマンが顧客のオーダーを利用して、そのトレードが実行される前に、相場を動かしているという事実をすっぱ抜いた。 これはFront Runと呼ばれる操作...多分法律に触れないんだろうけど。

ゴールドマンは、能力があるから勝ってきたわけで、競争相手が殆ど死に絶えた今、彼らに圧倒的な影響力があって当たり前。政治家は企業の味方というのは、今に始まった訳じゃない。ただ、ゴールドマンの存在が、イスラエルの核兵器の様に暗黙の了解という状況になっており、メディアも怖がっているのがおぞましいのである。


Saturday, July 4, 2009

サラがアラスカ知事職を投げ出した理由。

サラが、知事をヤメると宣言。支離滅裂なスピーチでまた世間を惑わせている。今後は共和党の候補者を応援して全国を回りたいとか適当な事言ったが、誰も本気にしていない。サラはサラの為にしか動かない。

Sarah Palin winking


3つの理由が考えられる。

次期大統領選
アラスカの知事に選ばれたという事実は、履歴書に載せられる。かったるいアラスカの知事をするより時間を有効に使ってアメリカ全土でプロモーションを出来る環境をちゃっかり選んだ。ただ、中途で知事の様な重要な職をヤメる様な人間に大統領が勤まるだろうか? そういう批判は短期のセットバックと考え、博打に出たのか?

自伝を出すという話は既に発表されている。少なくとも7−10億円程の契約金が保証されているはず。アラスカ知事の年収は1200万円程、比較にならない。又、共和党の中では未だに熱狂的なファンがおり、講演収入、テレビ出演、トークショーのホスト等、儲かる話はいくらでも来ているはず。彼女自身のアセット(容姿、話題性、人気)を現金化するのは今が最後のチャンス?

汚職疑惑
ワシラ町長時代、スポーツアリーナの建設に伴い、ある建設会社を不当に起用。その建設会社はサラの自宅の建設の際資材を提供している。この件に関しては、以前から噂になっていたが、本格的な捜査が始まったのかも知れない。今までも色々とスキャンダルで弁護士費用が50万ドルかかっている上、この話が本当ならさらに莫大な費用が予想される。

この爆弾宣言の直前、共和党上層部は、サラにはアラスカに戻って大人しくしてくれいう声があった。彼女は共和党のベースには有り難いが、今後の事を考えると厄介者。最近、Vanity Fairでも大きな暴露記事があったばかり。

サラは、知性に欠け、世界情勢の基本も知らない。地理の知識は日本の中学生以下。でも、彼女が凄いのは、政界という市場に於ける自分の価値を把握している。早々と損切り(辞職)して、全国展開に乗り出す。皆の予想より1年程早く...




Thursday, July 2, 2009

David vs. Goliath (ゴールドマン・サックス陰謀説)

陰謀説(Conspiracy Theory)といえば、ケネディ暗殺や、月面着陸偽装等が頭に浮かぶが、最近ゴールドマン・サックス(GS)陰謀説が頻繁に語られている。

GSが実はアメリカやヨーロッパの政治経済を支配しているという説。この話になると、右翼も左翼も仲良しになる。私は、半信半疑であるが,面白くて仕方がない。

GSに真っ向から挑戦した奴がいなかった(ブロガーとかは別として)。そこに、政治評論家として人気のあるMatt TaibbiがRolling Stone誌にGSの悪事を暴く記事を書いた。彼は、3月頃から金融崩壊に興味を持ち(彼は経済に関しては素人と自認)、”The Big Takeover"という記事でAIG救済を採上げ高い評価を受けていた。

最新の記事のタイトルは”The Great American Bubble Machine(リンクは記事とビデオ)"。


この記事では、GSは吸血イカでとかバブル・マフィアと例えられ、どの様に今世紀に起ったバブルをクリエートしたかが焦点。
  • インターネット・バブル:利益を出せないガラクタのスタートアップをどんどんIPOさせた。
  • サブ・プライム・バブル:値打ちのない住宅ローン債権を売りまくり、裏で空売りしまくった。
  • 商品先物:去年のオイルの高騰はGSとモルガン・スタンレ−の仕業。
又、GSはOBを政界に送り出し、ワシントンを実質牛耳っている実情。

Mattの記事に対し、GSのPRが返答した。これが傑作で、完全にガキ扱い...例えば、単なるGS陰謀説の蒸し返しだとか、あんたは複雑性を理解しとらん、ローリングストーンはオールマンの記事でも書いていればいいとか。たた、Mattの記事の内容を具体的に否定した訳ではない。Mattは反論してみろと啖呵を切った。

私の見解。GS陰謀説というより、GSの影響力が強くなりすぎたという事。去年までベア、メリル、リーマンがまだ健在の時、私はよく”5 White Boysの寡頭制”なんて言ってた。それが、2社だけ生き延びた。私が一番懸念しているのは、GSのプログラム・トレーディングの圧倒的なボリューム。他社を大きく引き離しており、市場を独占的に操作出来る事。当然他社もGSのプログラムを真似る。

もう一点、AIGを救済したのは究極的には、GSを危機から守るためだったと思う。GSはAIGから$12 Billion受け取り、TARPの$10 Billionもちゃっかり返済。株価もここ数ヶ月で2倍以上反発。

去年の金融危機の際、ヘンリー・ポールソン(元GSのCEO)が財務長官でなかったらと考えたら恐ろしい。大恐慌の際、ルーズベルトがジョー・ケネディを起用したのと同じ理屈。彼の素早い判断力と実行力には凄みがあった。

GSはトビっきり優秀な連中が集まり、法律で許される限度ギリギリで大もうけする天才集団。ミルケンやボースキ−等は、欲が理性を超えたから捕まった。陰謀説?ウォール・ストリートは陰謀だらけ。なにも今世紀に始まった話じゃない。